シータ基準
生成文法では, 長い間X-bar理論というモデルが使用されてきた. このモデルは, そのままでは, 様々な過剰生成を行ってしまう. しかし実際には認可されない文も存在することを踏まえると, この過剰生成を抑える何かが必要になる. このために用いられるTheta Criterion (シータ基準) をCarnie (2021) のChapter 8を参考にして確認しよう.
Theta Criterionとは, 語彙に保存されている各述語のthetaグリッドと, 実際の文中の項構造との対応関係を制約する原理である.
- 各項は一つかつ一つだけのtheta役割を割り当てられること.
- 各theta役割は一つかつ一つだけの項に割り当てられること.
これにより, 項の取り過ぎや取り足りなさが, 意味論的・語彙的理由から非文法として弾かれることになるのである.
X-bar理論は「補部は任意」「指定部も基本的には一つ」といった非常に一般的な構造規則しか持たないため, そのままでは過剰生成を許してしまう. そこで, まずX-bar規則が自由に樹形図を生成し, その出力をTheta Criterionがフィルターとして選別するという二段階モデルを想定するのである. つまり, 統語構造そのものは形式的には許容されるが, 語彙項目に付随するthetaグリッドと一致しない構造はTheta Criterionによって排除される, という役割分担になっている.
参考文献
- Carnie, A. (2021). Syntax: A generative introduction (4th ed.). John Wiley & Sons.