素性統合


生成文法では, 単語は素性の束であると仮定することを以前の投稿でまとめたが, この素性に対しては, 様々な仮説が提唱されている. Feature Unification (素性統合) もその一つである. 今回は, この素性統合を Ginsburg (2025) を参考にして学びたい.

素性統合とは, 生成文法, とりわけミニマリスト・プログラムにおいて, 二つの要素がもつ同じ種類の未評価素性どうしを「一つにまとめる」操作である. 従来の Agree が「未評価素性 (uF) が, 値付き素性 (F) から値をもらう」関係として理解されてきたのに対し, ユニフィケーションは「uF と uF が結合して, 共有された一つの uF になる」というイメージである.

虚辞構文を例にとると, T も there もともに uPerson をもつと仮定される. このとき, まず T の uPerson が there の uPerson と Agree し, uPerson_T と uPerson_there が「同じもの」として統一される. この段階では, まだ値自体は与えられていないが, 「T と there が同じ人称素性を共有している」という関係ができる. その後, T の uPhi (数・性を含むφ素性) が下位の名詞句 (a man など) と通常の Agree を行い, そこで初めて値付きのφ素性が得られる. このとき, T 側でチェックされるだけでなく, T とユニフィケーションされていた there 側の素性も同時にチェックされる, というのがこの枠組みの狙いである.

このように, 素性統合は

  1. 「uF と F」の一致 (通常の Agree) とは別に,
  2. 「uF と uF」を結びつけて共有させる操作

として導入されており, 長距離一致や虚辞構文のように {XP, YP} 構造にきれいに還元できない一致関係を, ラベリング理論の枠内で扱うための道具立てであると言える.

参考文献

  • Ginsburg, J. (2025). Expletive constructions and agreement in Labeling Theory. Studia Linguistica.

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