Sluicing の特徴
以前の投稿で Sluicing という省略現象について見た.
今回は, この Sluicing を Maeda & Matsumoto (2011) に基づいてより深く考察する. Maeda & Matsumoto (2011) では日本語の Sluicing に見られる興味深い特性として次の 5 点を挙げている.
- 格助詞の制限: 残留要素に主格の「が」を伴うことはできない(例: *誰が(だ)か).
- コピュラ「だ」の随意的出現: 「誰から(だ)か」のように, コピュラを伴うことができる.
- 複数残留要素(Multiple Sluicing): 3 つ以上の疑問詞を残すことが可能(例: 「誰が何をいつどこでか」).
- Sloppy 解釈の許容: 「自分」などの再帰代名詞を含む場合, 文脈に応じた複数の解釈(strict/sloppy)が可能である. これは削除操作が適用されている証拠とされる.
- 島の制約(Island Effects): 残留要素に格助詞(「を」など)が付く場合に限り, 複雑な名詞句などの「島」から要素を抜き出すことができないという制約を受ける.
どれも非常に興味深い現象であるが, 個人的には 3 番の複数残留要素と 5 番の島の制約に関して, 私が主に研究している等位構造にもつながるような特徴があるように思われ, この 2 つを特に重点的に学びたいと考えている.
参考文献
- 前田雅子, & 松本知子. (2011). 日本語の sluicing 文に関する統語分析. 『九大英文学』, 53, 117-138.