言語の階層構造の反対称性


人間の言語の起源を検討すると言うのは、非常にロマンが溢れるトピックであるが,一方で科学的な検討と言う観点では、非常に難しいトピックでもある.以前の投稿で詳細にまとめたが、人間の言語進化には化石が残らない.そういった特徴から、一般的な進化学で用いられる研究アプローチが適用できない.

ここに対して,Tanaka (2018)は回帰的併合を実現した階層構造を有する言語には3つの特性が存在し,それらが人間の言語の起源を検討する要素になると主張している.

その3つは次である.

  • 並列関係の反対称性
  • 上下関係の反対称性
  • 含意関係の反対称性

詳細は別の投稿でそれぞれまとめたいと考えているが,これらを元に連続性から理論を導くことを試みている.こういった観点で非常に興味深い表現をしている箇所があったので引用したい.

”(前略)…skyhook”(空から伸びてくる想像上の吊り上げづる;天からの贈り物)ではなく “crane”(地に足の着いた吊り上げづる;実証可能な実体)でなければならない。

(Tanaka, 2018)

上述の3つの反対称性からTanaka (2018)はcraneとしての理論を試みている.

参考文献

  • 畠山雄二. (2017). 最新理論言語学用語事典.
  • 遊佐典昭(編),杉崎鉱司,小野 創,藤田耕司,田中伸一,池内正幸,谷 明信,尾崎久男,米倉 綽. (シリーズ監修 西原哲雄, 福田稔, 早瀬尚子, 谷口一美). (2018). 言語の獲得・進化・変化―心理言語学,進化言語学,歴史言語学 (言語研究と言語学の進展シリーズ3). 開拓社.

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