脳科学との共存を念頭に置いた理論。


チョムスキーの生成文法は その革新性から言語学において非常に大きな影響をもたらした事は間違いないが、 一方で、その理論に対しての批判も多く行われてきた。

そんな中で、 脳科学との共存が可能かどうかと言う観点から、生成文法の限界を指摘し対案を提示している論文を読んだのでまとめておきたい。

Minegishi (2018) はまず 生成文法の根本的な問題点は、チョムスキーの言う「文法」がどういった生理的な基盤に支えられているのかと言う問題を扱わないことを指摘している。

こういった 背景からMinegishi (2018) は 脳科学との共存を前提にした理論を構想している。 それを仮に「反生成文法」と表現しているが その中のポイントを4点まとめている。

  1. 研究の目的 : 言語の運用とその生理的な基盤との関係の解明を目的とする。
  2. 言語は人間の認知機構を基盤として成立していると考える。
  3. 統語部門は、意味部門、音韻部門など、他の言語モジュールと連続した関係にある。
  4. 言語の形態論と統語論とを区別する。
    (Minegishi 2018)

私としては、チョムスキーは生理的な基盤にも思考を巡らせているようには感じているが、対案を出し建設的な議論を進めることは学問として非常に重要である。

とりわけ、 統語部門を他の部門と連続した関係にあると捉える事は言語の運用を考える上で非常に重要なことだと思う。

参考文献

  • 峰岸真琴. (2018). 脳科学と共存する言語理論は可能か?. 認知神経科学, 20(2), 111-119.

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