移動するIP句


Across-the-Board movement (ATB)とは, ある要素が「and」や「or」といった接続詞で作られた等位構造から, 一度に抜き出される現象のことである.

今回はこのATBが様々な句を対象に起こることを, De Vries (2017)のIP句に関する例文を参考にして確認する.

次の例文は, ATBがIP句レベルでも起こることを示したものである.

A. Never has Peter_ eaten pork or Mike_drunk alcohol.

B. Never will/may Peter _ eat pork or Mike _drink alcohol.

(De Vries, 2017, p. 4)

この文では, 否定辞 Never が文頭に移動したことによって, 主語と助動詞の倒置が起きている. このとき, 助動詞 has は, 接続された二つの構造, Peter _ eaten pork と Mike _ drunk alcohol の両方のIP (TP) の主要部 (I/Tの位置) から一度に移動したと分析される. つまり, 一つの助動詞 has が, Peterの節とMikeの節の両方と関係しているのである.

参考文献

  • De Vries, M. (2017). Across‐the‐board phenomena. The Wiley Blackwell Companion to Syntax, Second Edition, 1-31.

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