カオスな格
言語には格というものがある. 例えば主格で文章を構築する場合, 英語ではI, we, he, sheといったような単語が用いられ, HimやHerといった別の格を表す単語が用いられることは基本的にない. 他方で, 等位構造を用いる場合この格の振る舞いが異なるケースが報告されている. Progovac (1998) からいくつか例を引用する.
- Him and I both left.
- Robin saw he and me.
- I really wanted my mother to live with I, him, and Michael.
(Progovac, 1998)
これを見ればよくわかるが, 主語への対格付与や目的語への主格付与などが許容されている. 1998年当時の研究ではあるが, Progovacはこれに対して「近年の研究では, 等位句における予期せぬ格付与が利用され始めている」という言葉を残している. 現在が2025年であることを考えると, 約25年前の研究ではあるが, これはもしかすると比較的最近起きている言語変化なのかもしれない. となれば, この言語変化から等位構造の新たな側面が検討可能かもしれない.
参考文献
- Progovac, L. (1998). Structure for coordination: Part I. Glot International, 3.