生成文法における2つの構造。


チョムスキーの生成文法理論には、普段日常で言語に接する時にはなかなか直感的に理解することが難しい概念が存在している。

その中でも、今回は生成文法の中の非常に重要な概念である表層構造と深層構造についてまとめてみたい。

生成文法の中心的な理論は人間の言語には普遍的な規則が存在すると仮定する普遍文法の想定にある。 つまり、日本語や英語やフランス語、ドイツ語、あらゆる言語において普遍的な規則が存在すると生成文法は主張する。 しかし、それらの言語を一目でも見ればわかる通り、それぞれの言語において様々な差異が目立つ。

例えば、日本語では「 太郎はと言ったの?」という文章で疑問が発せられるが 英語では”What did Taro say?”という文章で疑問が発せられる。 この時、英語では疑問詞であるwhatが 文頭に移動すると言う現象が起きるが、日本語では疑問詞であるは移動が起こらない。 つまり言語間での差異が存在している。

人間の言語には普遍的な規則が存在すると仮定している生成文法にとって、 この差異は普遍性とは相反するものである。 こういった言語間の豊かな差異に対して妥当な説明を求める際に表層構造と深層構造という概念を用いる。

この2つの概念を用いて、生成文法では 我々人間の言語は深層構造では普遍的な共通性を有し、 その深層構造から様々な操作が加わり最終的に我々が知覚するような表層の構造において言語間で差異が生まれると考える。

つまり、表層構造と深層構造という 2つの構造を仮定することで、人類の言語において共通な部分とそれぞれの言語間において異なる部分を1つの理論で説明できることになる。

参考文献

  • 原口庄輔, & 中村捷. (1992). チョムスキー理論辞典. 東 京: 研 究 社 出 版.
  • 今井, & 外池. (2019). チョムスキーの言語理論: その出発点から最新理論まで.

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