他の動物でのFOXP2遺伝子の考察


言語能力への関与が示唆されている遺伝子としてFOXP2遺伝子の存在について投稿した. 今回はこのFOXP2遺伝子をヒト以外の動物で確認された内容についてまとめたい.

ある実験ではマウスに対してFOXP2遺伝子の欠損をさせたところ興味深い結果が見られたことを報告している.

マウスは母親と子を話すと子が超音波を発生することが確認されている(ultrasonic vocalisation).しかし,FOXP2遺伝子の欠損をさせたマウスではultrasonic vocalisation が起こらないことが確認された.さらにこのマウスは肺機能の欠損のために生後3週間ほどで死んでしまうとのことだ.

ultrasonic vocalisation を 一概にマウスの言語能力と呼ぶ事は難しいが, 超音波で情報をやりとりしていると考えると,広義的にはコミュニケーション能力の欠如と捉えることは可能であろう. このことからultrasonic vocalisation の研究が進み,もし人の言語能力に近しいものがあると判断されればFOXP2遺伝子は言語能力に関与した遺伝子である確率は高まる.

他方, 肺機能にも影響が出ており(加えて小脳の神経細胞にも影響が出ている),言語能力以外にも関与している可能性は十分あると言える.

参考文献

  • Shu, W., Cho, J. Y., Jiang, Y., Zhang, M., Weisz, D., Elder, G. A., Schmeidler, J., De Gasperi, R., Sosa, M. A., Rabidou, D., Santucci, A. C., Perl, D., Morrisey, E., & Buxbaum, J. D. (2005). Altered ultrasonic vocalization in mice with a disruption in the Foxp2 gene. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 102(27), 9643–9648. https://doi.org/10.1073/pnas.0503739102
  • 藤田, 岡ノ谷, & 浅田. (2012). 進化言語学の構築: 新しい人間科学を目指して.

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