普遍文法が満たさななければならない条件


ヒトには生得的な言語能力があり, その裏側にはUniversal Grammar(普遍文法)というものが存在していると仮定し, その内実を明らかにすることが生成文法の目標である.

ただし, この目標を達成するためには3つの矛盾するような目標を達成しなくてはならないとChomskyは言う.

UG has goals that appear contradictory. It must meet at least three conditions:

[A] (i) It must be rich enough to overcome the problem of poverty of stimulus (POS), the fact that what is acquired demonstrably lies far beyond the evidence available.

(ii) It must be simple enough to have evolved under the conditions of human evolution.

(iii) It must be the same for all possible languages, given commonality of UG.

(Chomsky 2021, p 7)

UGには矛盾するように見える目標がある。それは少なくとも3つの条件を満たさなければならない。

[A] (i) 刺激の貧困(POS)の問題、すなわち習得されたものが利用可能な証拠をはるかに超えているという事実を克服するのに十分豊かでなければならない。

(ii) 人間の進化の条件下で進化するのに十分単純でなければならない。

(iii) UGの共通性を考慮すると、すべての可能な言語に対して同じでなければならない。

これらの達成はとても難しいものであるということは間違いなく, 生成文法が過去70年に渡って試み続けた理想のモデル作成自体であると言えるだろう. そして, 特に(ii)はミニマリスト・プログラムが目指す探究指針を端的に表現している.

参考文献

  • Chomsky, N. (2021). Minimalism: Where are we now, and where can we hope to go. Gengo Kenkyu (Journal of the Linguistic Society of Japan), 160, 1-41.

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