言語における普遍性


以前の投稿で言語の統計的な普遍性について述べた.言語の普遍性という問題は非常に興味をそそられるものであるとと同時に非常に証明が難しい問題である.なぜなら人間言語は約 7000 あるとされ,その全てを調査することが難しいからである.

そんな中で142 の言語を調査した非常に大規模で有名なものとしてGreenberg (1963)の研究がある.この研究結果からGreenbergは下記の普遍性を提案している.

Universal 1. In declarative sentences with nominal subject and object, the dominant order is almost always one in which the subject precedes the object.

Universal 2. In languages with prepositions, the genitive almost always follows the governing noun, while in languages with postpositions it almost always precedes.

Universal 3. Languages with dominant VSO order are always prepositional.

Universal 4. With overwhelmingly greater than chance frequency, languages with normal SOV order are postpositional.

Universal 5. If a language has dominant SOV order and the genitive follows the governing noun, then the adjective likewise follows the noun.

Universal 6. All languages with dominant VSO order have SVO as an alternative or as the only alternative basic order.

Universal 7. If in a language with dominant SOV order, there is no alternative basic order, or only OSV as the alternative, then all adverbial modi-fiers of the verb likewise precede the verb.

(Greenberg 1963)

普遍法則1 名詞主語と名詞目的語を持つ平叙文において、主要な語順はほぼ常に主語が目的語に先行するものである。

普遍法則2 前置詞を持つ言語では、属格はほぼ常に支配名詞の後に続き、後置詞を持つ言語ではほぼ常に前に置かれる。

普遍法則3 主要な語順がVSOである言語は常に前置詞を持つ。

普遍法則4 通常の語順がSOVである言語は、偶然の頻度を大幅に上回って後置詞を持つ。

普遍法則5 主要な語順がSOVであり、属格が支配名詞の後に続く言語では、形容詞も同様に名詞の後に続く。

普遍法則6 主要な語順がVSOであるすべての言語は、SVOを代替の基本語順または唯一の代替基本語順として持つ。

普遍法則7 主要な語順がSOVである言語において、代替の基本語順が存在しないか、代替語順がOSVのみの場合、動詞の副詞修飾語はすべて動詞の前に置かれる。

(ChatGPT 訳)

これらをまとめてはいるが,この内容にも例外はあるとしている.

やはり個別言語に普遍性を見出すことはかなり難しいと言える.

参考文献

  • 松本克己. (1987). 語順のタイプとその地理的分布: 語順の類型論的研究 その 1. 文藝言語研究. 言語篇, 12, 1-114.
  • Greenberg, J. H. (1963). Universals of language.
  • 梶原秀夫. (2005). 言語の普遍的特性–語順, 膠着語, 屈折語に焦点を当てて. 文京学院大学外国語学部文京学院短期大学紀要= Journal of Bunkyo Gakuin University, Department of Foreign Languages and Bunkyo Gakuin College, (4), 41-63.

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