単語における構造
統語論は主に文を対象に, その構造を研究する. ヒトが算出する文章は併合により組み合わされた階層構造を有し, その階層構造に意味を依存させる階層構造の依存性がヒトの言語特有の能力であるとされる. しかし, 文を形成させるために必要となる語 (word) はどうであろうか.
Nóbrega and Miyagawa (2015) は単語の形成においても併合による組み合わせ操作を想定し, その例として unlockable といった派生語を用いて説明している.
unlockable は「アンロックできる」という意味と「ロック自体が不可能」という2通りの解釈ができる. これは(簡素化した説明にすれば)un-, lock, -able の3要素が併合で組み合わされる際に, どのような階層になるかという観点で説明ができる. 言い換えれば, この意味の曖昧性は, 各要素がどのような順序で併合されるか, すなわち [[un- [lock-able]]] という構造か [[[un-lock] -able]] という構造かという, 単語内部の階層構造の違いに起因すると Nóbrega and Miyagawa (2015) は想定している. この想定が正しければ我々ヒトは文だけでなく単語処理においても併合操作を用いることになり, よりミニマルな理論構築が可能になる.
参考文献
- Nóbrega, V. A., & Miyagawa, S. (2015). The precedence of syntax in the rapid emergence of human language in evolution as defined by the integration hypothesis. Frontiers in Psychology, 6, 271. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00271