日本語の特徴
日本語は英語などの言語と違って格助詞を用いる言語である. それゆえに英語などのヨーロッパ言語には見られない, 特徴的な性質がある. 今回はその性質を見てみたい.
まず一つに, 同一格の多重出現が挙げられる. 例えば次のような例である.
- 昨日の夜の山田先生の数学の授業
これを見るとわかるように, 「の」という格が何回も出現していることがわかる. こういった複数回同じ格が現れるような構造は, 英語などの言語では基本的には見られない.
さらに, 別の観点として, 格助詞の交代現象がある. これはある特定の条件下では, 異なった格助詞が交代可能になるというものである. 次の文を見てみよう.
- 佐藤さんは言語学の講義をとても面白いと思った.
- 佐藤さんは言語学の講義がとても面白いと思った.
この二つの文を見比べてみると, 講義につく格助詞が「が」と「を」で交代していることがわかる. こういった現象も, 基本的には英語などの言語では観察されず, 日本語のような格のシステムを用いる言語の特徴であると言える.
こういった特徴は, 英語などの言語に用いられている統語的な理論だけでは, 説明が困難な場合があり, また別の発想が必要になってくるであろう.
参考文献
- Sakai, H. (2006). The visibility guideline for functional categories: Verb-raising in Japanese and related issues. In Theoretical comparative syntax (pp. 289-336). Routledge.