心からの(非)独立


人間以外の動物は、最も人間に近いとされる霊長類であっても、人間ほど複雑なコミュニケーションを取った例は確認されていない.
そもそも、コミュニケーションに用いられる単語という観点で考えてみても、人間と人間以外の動物の間には本質的な違いがあるように思える.
Chomsky (2007) は、音声と現実世界に存在する対象との結びつきにおける、人間と人間以外の動物の差異を提案している.
具体的には、人間以外の動物が鳴き声などの音声情報を用いる場合、その音声は実際の対象と、その対象に対する瞬間的な情動が一対一で結びついていると考えられる.
一方で、人間の場合、音声情報は現実世界の物質そのものではなく、心の中に構築された心的表象に基づいているとされる.
この違いは、心から独立している (mind-independent) か、心に依存している (mind-dependent) かという観点で区別することができる.
人間の言語が心に依存している (mind-dependent) からこそ、「何かを食べたい」という欲求がなくても、「食べる」という行為そのものについて純粋に議論することが可能になる.
こうした心的表象の独立性という視点は、人間と言語の特殊性を考える上で非常に重要であり、人間と人間以外の動物のコミュニケーションを区別する際の本質的な要素となりえる.

参考文献

  • Chomsky, N. (2007). Of minds and language.
  • 畠山雄二.(2019). 理論言語学史

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