言語能力を実現する生物学的な適応。
以前、前適応 (preadaptation) という概念を紹介した。 簡単に言えば、 ある種の生物が有している形質は もともと他の用途で進化してきたものが流用されることがあると言う考え方である。 例えば、鳥類の羽毛は空を飛ぶたびに進化したのではなく、もともとは体の温度を保つ保温のために進化したものが 後になって、空を飛ぶという行為に流用されたと考えることができる。 つまり、羽毛と言うものは 高温のために進化した形質を飛翔のために流用したということである。
Okanoya (2010)は こういった背景をもとに、人間の言語も進化の過程で獲得されたものであるのならば、言語能力を可能にする生物学的な形質の一部は、人間以外の動物でも備わっているはずだと考え、「言語起源の前適応説」という考えを主張している。
言語の前適応の機能の例として、Okanoya (2010)は次の3つを考察している。
- 発生可塑性 発声の信号を自分の意思で変調できる能力
- 音列分析化 発声の信号の流れを切り分け、組み合わせることができる能力
- 状況文節化 その個体の状況を今までの経験から要素の組み合わせとして処理できる能力。
参考文献
- 岡ノ谷一夫. (2010). 言語起源の生物学的シナリオ. 認知神経科学, 12(1), 1-8.