FSQ(Form Sequence)の問題点
等位構造が, 生成文法の歴史において, 非常にトリッキーなトピックであったことは, 以前の投稿でまとめた通りである.
今回は, その等位構造に対して提案されたForm Sequenceという概念に対して, Bode (2024) がまとめた問題点を確認してみたい. BodeはForm Sequenceの複数の問題に言及しており, その中の例を挙げると下記の2つの問題点を指摘している.
- 計算の不必要な複雑化
FSQは, 可能な限り最も単純な手続きである「Merge(Simplest Merge/MERGE:併合)」に加え, 追加的に採用された統語操作であり, これが計算を不必要に複雑にしてしまう. - 二項性(Binarity)と単純性の原理への違反
Set-Merge(集合併合)とは異なり, FSQは非二項的(non-binary)な方法で適用され, n項集合(n-ary sets)の生成や操作を伴う. チョムスキー自身が「二項性は第三の要因(自然の法則)に由来する」と示唆しているにもかかわらず, FSQはこの単純性の原理に違反する.
簡単に言えば, Bodeによれば, Form SequenceはSMTの原則を逸脱するものであり, 理論を不必要に複雑化させてしまうという点が大きな問題であると読み取れる.
参考文献
- Bode, S. (2024). Coordination and the Strong Minimalist Thesis. Routledge.