接辞の中断
等位構造は基本的に統語的な性質が同じものを2つ以上結ぶ機能を有する.
しかし, 日本語で2つ以上のVerb Phrase (動詞句) を等位接続する際には興味深い形態的特徴が観察できる. 次の例を見てみよう.
- 工藤は歩いた. 松永は走った.
- 工藤は歩き, 松永は走った.
1の文は2つの文を並列しているが, 2は1つの文の中で等位接続を行っている. この際に注目すべき点は, 1の文では2つの動詞それぞれが過去形を示す形態素「-ta」を持って現れているのに対し, 2の文では最初の動詞「歩く」は「-i」, 2つ目の動詞「走る」は「-ta」という異なる形態を持って現れていることである. つまり, 1つの文内で2つのVPを等位接続する場合, この過去形を意味する形態素は最後の動詞にのみ現れ, それ以前の動詞には現れないことがわかる.
これをSuspended Affixation (日本語では「接辞の中断」などの訳になると考える) という.
加えて, 最後の動詞以外に接辞を付加すると非文法的になることを踏まえると, この現象は任意的なものではなく義務的なものと考えるのが妥当であり, 等位構造を考える上で非常に重要な要素の一つであると言える.
参考文献
参考文献
- Nishiyama, K. (2012, October). Japanese verbal morphology in coordination. In Handout for the Workshop on Suspended Affixation, Cornell University.