理論の負荷性
理論言語学では当然であるが,言語に対する理論を立てる.この際,理論というのは非常に操作性が高いため,ともすれば理論を構築したものの恣意性によって,いかようにも理論は作られてしまう.しかし当然ながら,どのような理論が立てられ得るからといって,その理論が必ず正しいとは限らない.理論を実証するためには,実際に観測できる事象やデータを基にして,その理論が正しいかどうかを判定する作業が必要になる.言い換えるならば,実際に起きる現象を観察して,理論を構築する必要があるということである.
他方で,実は「観測するものは,理論を前提に観測される」という,鶏と卵のような問題が存在する.これはNorwood Russell Hansonというアメリカの学者が提唱したTheory-ladenness of observation(理論の負荷性)と呼ばれている.
我々が何を観察したいかと考えるとき,それは先行的に自分の理論の実証や,ある程度の仮説を持って観察されることになる.
言うなれば,見るべきポイントが「その仮説が妥当かどうか」を判断する点に限定されてしまう.ひいては,観測されるもの自体がその理論に基づいた観測のされ方をしてしまう.
この点は,理論構築において常に留意しなければならないだろう.
参考文献
- Brewer, W. F., & Lambert, B. L. (2001). The theory-ladenness of observation and the theory-ladenness of the rest of the scientific process. Philosophy of Science, 68(S3), S176-S186.