間接疑問文の縮約


以前の投稿でEllipsis (省略現象)という現象についてまとめた.

言葉の「省略」という現象は, 私たちが日常的に無意識に行っているものだが, 言語学の視点で見ると非常に興味深いメカニズムが隠れている.

今回は, その中でもSluicing(間接疑問文縮約)について見ていく.

Sluicing(スルーシング)とは, 間接疑問文において, 疑問詞(「誰」「何」「どこ」など)だけを残し, それ以外の重複する節の内容を丸ごと省略してしまう統語現象を指す.

私たちは, 前後の文脈から内容が明らかな場合, 同じ言葉を繰り返すことを避ける傾向がある. 具体的な例を挙げて, その構造を見ていく.

例文A: 「誰かが私の席に座っていたが, 誰だかはわからない.」

例文B: 「彼は来月どこかへ旅行に行くらしいが, どこへかは教えてくれなかった.」

これらの文を詳しくみると, 表面上は見えない「欠落した部分」があることがわかる.

表面上現れる「誰だか」 / 「どこへか」は, 本来の意味では「誰が(私の席に座っていたの)か」 / 「どこへ(彼が旅行に行くの)か」となる.

このように, 聞き手は省略された部分を直前の文脈から補い, 「完全な節」として解釈しているのである.

参考文献

  • 前田雅子, & 松本知子. (2011). 日本語の sluicing 文に関する統語分析. 九大英文学, 53, 117-138.

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