ウィリアムズ症候群について
人間の言語能力が独立した能力であるのか, それとも他の一般的な知能と関連する能力であるのかについては, 現在も議論が続いている. 特に近年では, 遺伝子群の影響を考慮した研究が進展しており, 言語能力と遺伝的要因の関係性が注目されている.
言語能力が一般的な知能から独立している場合, 特定の遺伝子の異常が言語能力に特異的な影響を及ぼす可能性がある. ウィリアムズ症候群は, このような症例の一つとして, 言語学や神経科学の分野で重要な研究対象となっている. この症候群は, 7番染色体の一部が欠失することによって発症する. 主な特徴として, 知能指数(IQ)の低下, 空間認識能力の弱さ, 低身長といった特徴が挙げられる.
一方で, ウィリアムズ症候群の患者は多弁で社交的な性格を持つことが多く, 言語能力, 特に文法能力においては健常者と同等のレベルが維持される場合が多いとされている. この点は, 言語能力が一般的な知能と異なる基盤を持つ可能性を示唆している.
現在も研究は進行中であり, 結論を出すにはさらなるデータが必要である. しかし, ウィリアムズ症候群の症例から得られる知見は, 人間の言語能力, 特に文法能力が他の一般的な知能から独立した能力であるという仮説を支持する可能性がある. この見解は, 統語論における「統語自律性(the autonomy of syntax)」という主張の妥当性を補強するものとなるかもしれない.
参考文献
- 難病情報センター Japan Intractable Diseases Information Center ウィリアムズ症候群(指定難病179) https://www.nanbyou.or.jp/entry/4766
- Touliatou, V., Thomaidis, L., Madoudis, S., Drandakis, H., Kitsiou, S., Traeger-Synodinos, J., … & Kanavakis, E. (2008). Multidisciplinary medical evaluation of children younger than 7.5 years born after preimplantation genetic diagnosis for monogenic diseases. Pediatrics, 121(Supplement2), S102-S102.