イギリス大学院での生活が始まり2周目を迎えている。Readingに忙殺される日々だ。なので、この2週間はインプットの量が非常に多かった。そのガス抜きとしてアウトプットをしようと思う。lectureで学んだことをアウトプットし理解を深めようと思うのだ。
今回はResearch Methodの授業で学習したことを復習したい。
科学としての言語学
まず、LinguisticsはScienceとして研究できる。
言語学の巨人Noam Chomskyはこういう議論をしていた。
“I would like to discuss an approach to the mind that considers language and similar phenomena to be elements of the natural world, to be studied by ordinary methods of empirical inquiry.”
– Noam Chomsky (1995).
言語やそれを生み出すmindにempirical inquiryつまり実験・経験に基づいて問いただすアプローチについての議論である。
しかし、それを考えるには言語というものは構成要素が複雑に絡み合い過ぎている。そこで言語を異なった要素(Levels)に分解して解きほぐす。要素が異なれば、異なった疑問が生まれ、異なった研究手法が必要になるからだ。
そして、その分解された構成要素として存在している学問がSyntax,Phonology,Semantics,Pragmaticsだ。さらにその構成要素を別の角度から捉えるためにLanguage ChangeやPsycholinguistics, Evolutionary Linguisticsなどがある。
このような研究というのは非常に広い範囲に枝分かれをしていき、私たちはたびたび異なった分野の相関関係を科学的に考えることにもなる。
科学的な研究
では、そもそも科学的とはどういうことなのか。それは観察→理論立て→仮説立て→実験データ→検証→観察・・・のループである。
まず、第一に物事を観察(Observation)することから研究は始まる。
そこから理論(Theory)を立てる。この理論とは詳細なものではなく、総体的なアイデアのことである。
そして、その理論に基づいて仮説(Hypothesis)を立てる。仮説は理論より詳細で、なおかつ実験によって検証可能なものである。
仮説を検証するための実験(Experiment)を考え実行する。実験は自分で環境を整えて実際に行うもの(化学実験など)と正確な観察によって行うもの(星の動きなど)がある。
最後に、実験で得たデータ(Data)を分析し、自分の仮説に一致するか・しないかを検証する。
そして、それらを元にまた観察(Observation)をするというのが科学的な研究である。
実際に、ChomskyはUG(Universal Grammer)を疑問文の生成ルールを用いて説明している。
英語の文を観察すると、Rabbits are nimble.を疑問文にする時は Are rabbits nimble?になることが分かる。そこで、英語の平叙文を疑問文にする時は単語を移動させるという理論が立てられる。
では、次に仮説を立てよう。今回 are という単語は文の2番目の単語が先頭に移動している。なので、「英語の平叙文を疑問文にする時は文の2番目の単語を先頭に移動する」という仮説を立てよう。
そして実際に実験を行ってみる。他の文と照らしわせてみよう。すると、この仮説はBrown rabbits are nimble.という文では成り立たないことが分かる。なぜならこの文の中で2番目の単語はrabbitsであるから、それを先頭に移動させてみると * Rabbits brown are nimble.という結果になってしまうからだ。
このデータから、「英語の平叙文を疑問文にする時は文の2番目の単語を先頭に移動する」という仮説は間違いであることが観察された。では、何が間違いだったのだろう?単語を移動させるという理論は間違いなさそうだ。しかし、そこで重要なのは単語の順番ではないのかもしれない。では、動詞が先頭に移動するという仮説はどうだろう。再度挑戦してみよう。すると、Brown rabbits are nimble.はAre Brown rabbits nimble?という疑問文ができた。一見、この仮説は正しかったと思いたくなる。しかし、Brown rabbits that are in the cage are nimble.という文と照らし合わせると間違っていることが分かる。この文には動詞が2つ存在するので、動詞を先頭に移動させると、* Are are brown rabbits that in the cage nimble? となってしまうからだ。またも仮説は正しくないというデータが得られた。
では、構造に依存するという仮説はどうであろう。言い換えれば、その文の主語に結びつく動詞が先頭に移動するという仮説だ。この仮説のもとBrown rabbits that are in the cage are nimble.という文を考察すると。[Brown rabbits that are in the cage]が主語であると分かるので、その動詞のareを先頭に移動する。すると、Are [brown rabbits that are in the cage] nimble?という文ができた。こうして、仮説は実証され、英語の平叙文を疑問文にする時は文の主語に結びつく動詞が先頭に移動するというということが分かった。
これが科学的な研究である。
そして、この授業ではどのようにグラウンドセオリーを築いていくか。そこからどうやって実験可能な仮説に落とし込むか。何が効果的な実験となるのか。その実験で得たデータをどう扱うべきか。というものを学習していくとのことだ。
今から、とても楽しみである。