学習ノートGenerative Syntax Lecture2-1の続き。
X’ Theory
X’ Theoryの原則をもう一度記しておくと
- あらゆる句は主要部を持つ。
- 主要部とそれによって定まる補部(complement)がX’という中間投射(feature projection)を形成する。
- 主要部によって定まらない、随意的な付加部(adjunct)がある場合はその上層に新たなX’を形成する。
- 指定部(Specifier)がX’を限定し、投射を閉じる、これが最大投射(maximal projection)つまり句と成る。
ということであった。
しかし、これだと句構造規則で定義した S→NP Aux VP というモデルが適用できない。このモデルでは三股が形成されてしまうからだ。
X’ Theoryでの記述方法
では、この問題をどのようにしてX’ Theoryは克服するだろうか?その解決方法は
- Auxをhead
- NPをspecifier
- VPをcomplement
として扱うことである。これにより、全てを二股の階層構造で記述することを可能にする。
例を見てみよう。以前の句構造規則ではThe agent will go to Madridという文をこのように分析していた。
一方、X’ Theroryで分析するとこうなる。IとはInflectionのことで、主語と動詞の一致(subject-verb agreement)と時制(tense)の情報を持つ。英語においてIはこれらの要素が担う。
- 法動詞(modal auxiliary) will, must, should, etc
- 助動詞 (auxiliary) have, be
- do
- 無し(null) [tenseとagreementが動詞によって実現されている状態]
これで全ての要素を二股でつなげることが可能になったことが分かる。
補文標識(complementizer)
ある文が別の文に埋め込まれている時には、補文標識(complementizer)という考え方を使う。この考え方は、補文標識が節の主要部(head)になるという考え方だ。
これも例文を見ながら確認していこう。
I think that Ken can speak Japanese. という文を考えてみる。見て分かる通り、I thinkという文にKen can speak Japaneseという別の文がthatを用いて埋め込まれている。Ken can speak Japanese. はIPであることが分かる。このことから、樹形図を書くとこうなる。
また、補文標識(complementizer)はいくつかの種類に分けることができる。(日本語の部分は私が個人的に訳したものである。)
A. 平叙形補文(declarative complement clause)
I think [that Ken can speak Japanese]
B. 埋め込み/間接疑問 補文(embedded/indirect question)
I wonder[ whether Ken can speak Japanese]
C.理由補文(reason-clause)
I am glad [because Ken can speak Japanese]
D.条件補文(conditional clause)
If Ken can speak Japanese, he can get a good job.