最近は人類の未来という本を読んでいる.

人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)
ノーム・チョムスキー レイ・カーツワイル マーティン・ウルフ ビャルケ・インゲルス フリーマン・ダイソン
NHK出版
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この本は,ノーム・チョムスキー,レイ・カーツワイル,マーティン・ウルフ,ビャルケ・インゲルス,フリーマン・ダイソンという5人の知識人に今後の世界はどうなって行くのかを問うものだ.
まだ,半分ほどしか読めていないが実に面白い.知識人たちの間でも,同じ話題に対して意見が全く異なっていることが分かる.
今回はこの中のノーム・チョムスキーのインタビューを読んで思ったことをまとめたい.

ノームチョムスキー

wikipediaより

言わずと知れた言語学者である.その他にも数学者,政治学者という顔も持つ知識人だ.

この本ではそんなチョムスキーに対して,大きく5つのトピックを問うている.

  1. アメリカの衰退
  2. トランプの率いるアメリカ
  3. ISと中東問題
  4. なぜ戦争するか?
  5. テクノロジーと人類の進歩

個人的に印象に残ったのが1と5である.

アメリカの衰退

近年,中国の台頭とともに議論されているのは,アメリカの衰退だ.グローバリズムの元,富は流動性を増し,コストの高い国から低い国へ流れている.そんな状況でアメリカはもはや世界の警察ではいられない.トランプ大統領が当選し,保護貿易主義の政策を実行しているのもそういった背景がある.

しかし,チョムスキーはアメリカが衰退し始めたのは最近ではないと主張する.

近年 、アメリカの斜陽ということがよく言われます 。しかしよく見落とされるのは 、アメリカの斜陽は七〇年前から始まっているということです 。アメリカの力のピ ークは一九四五年だったのです 。当時のアメリカの力は 、他の追随をまったく許さないもので 、世界中の富の約半分がアメリカに集中していました 。それほどの権力の集中は史上初のことです 。比類なき安全保障を手中にし 、西側全体をコントロ ールし 、大西洋 、太平洋共に支配下におさめ 、両大洋の対岸地域を傘下におさめ 、その軍事力は想像を絶する規模でした 。

人類の未来 AI、経済、民主主義 (NHK出版新書) より

奇しくも日本が敗戦した1945年がアメリカの絶頂期だったとチョムスキーは言う.これが正しいとすれば,なぜトランプのようなセンセーショナルな大統領が誕生したのかと言う疑問が生まれる.個人的に考えられるのは,衰退の進行が国民の我慢の臨界期を超えたと言うこと,そしてSNSの台頭ではないかと言うことである.個人が大きな力を持つSNSの社会では,様々な世界が表象される.また,SNSとプロパガンダは非常に相性がいいことは多くの例が示しているし,AIによるプロパガンダ的政治侵略の研究もあり,ロシアの介入が成功したのかもしれない.

とりとめのない考えだが,このチョムスキーの指摘は1994年生まれの私としては実に興味深かった.

 

テクノロジーと人類の進歩

AIやロボットの発達により,シンギュラリティが起こり,人間は職を失うなどという議論は旺盛を極めている.この主張に対してチョムスキーは完全に否定的な立場をとる.

空想です 。完全なるファンタジ ー 。信ずるべき何ものにも基づいていません 。確かに現代ではロボット化が進んでいます 。それはいいことでしょう 。なぜ人間が退屈で危険な仕事をしなければならないのか 。人間はもっとクリエイティブで満足できるような仕事に就くほうがいいでしょう 。しかしロボット化は労働市場にそれほど影響をもたらしてはいません 。低スキルの仕事はまだ山ほどあります 。

人類の未来 AI、経済、民主主義 (NHK出版新書) より

完全なるファンタジーとまで言っている.私はこのチョムスキーの立場には懐疑的である.理由はレイ・カーツワイル氏の主張する情報技術の 「指数関数的成長の力 ( p o w e r o f e x p o n e n t i a l g r o w t h )」というものに賛同するというのが1つ.また,チョムスキーは以前,コンピューターの言語処理についての予想に対して意見を変えていたことがもう1つである.

最初の情報技術の 「指数関数的成長の力 ( p o w e r o f e x p o n e n t i a l g r o w t h )というのは,情報技術は線型的ではなく指数関数的な進歩をするというものである.私は近年の技術を発達を見ているとこちらの方が正しいように感じる.

もう1つは自然言語処理の発達に関するチョムスキーのこの発言である.

初めてこの手法を耳にしたとき、ずいぶんとバカげたアイデアのように思えたものだこの統計モデルは言語をめぐるあらゆる知見を無視している。主語述語目的など、言語の構造としてわたしたちが学んできたものはどこにもない。加えてこの統計モデルは、文章の意味については、それがどんな内容であろうと、何ひとつ理解しようとしない。にもかかわらず、IBMのチームは、高度な言語学的知見をベースにしたシステムよりも、この手法のほうがはるかに精度が高いことを発見した。実際、このシステムは大きな成功収めた。Google翻訳などの最先端の言語翻訳システムはこれと似たアイデアを基にしている。

WIRED(ワイアード)VOL.19 より

私はこれと同じことがシンギュラリティに対しても起こるのではと考えている.

 

 

近いうちに,この本の他の4人のインタビューもまとめたいと思う.

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