De GrootのDistributed Feature Modelについての概説.(未だ勉強中の理論なので,ここがあ違っているなどがあればご教授頂けると幸い.)


Semester2で,Neurocognition Linguisticsという授業を受けた.実際の内容は言語習得が主な内容だったので,個人的にはPsycolinguisticsという授業名の方が近いように感じたが.

さて,その授業課題で私はバイリンガルの色彩語彙についてエッセイを書いた.

その中で,非常に興味をそそられるBilingual Lexiconモデル(BLモデル)に出会った.それが今回のトピック,De GrootのDistributed Feature Modelである.

この投稿ではDe Groot(1992 a)が提唱するDistributed Modelをまとめたい.

De Groot

prof. dr. A.M.B. (Annette) de Groot

Faculty of Social and Behavioural Sciences

Programme group Brain and Cognition.

アムステルダム大学教授.bilingualismとmultilingualismにおける心理言語学に関する研究を主にしている.(当人ホームページより)

Distributed Feature Model.

De Groot氏が主張しているBLモデル.

このモデルはコネクショニズムに基づいているところが興味が深い.

コネクショニズム

この考え方は,認知科学や人口知能などの様々な分野で応用されている.このモデルの面白い点は,最小構造をユニットとして,そのユニットの連結によるネットワークが情報を処理するという点にある.認知科学における問題として,認知の最小単位とは何であるかという問題がある.もし,認知の最小単位が概念だと考えると,その概念を組成しているものとは何か?という疑問が生じる.

例えば,りんごというものを認知するとしよう.

この時に必要なものがもし,りんごが画一的でイデアのようなものしか存在しないのならば,そのりんごという概念の組成を考える必要はない.しかし,実際のりんごを見ると形も微妙に異なるし,大きさもマチマチである.どうして異なるものを同じりんごという概念に帰納することが可能なのだろうか?また,りんごと梨の違いを明示的に表すには,どう説明すれば良いのだろう?このような問題から,認知の最小単位が概念と考えるのは,難しいように思える.

他方,コネクショニズムではユニットの連結によるネットワークを想定する.ユニットにはそれぞれ情報が格納されている.例えば,赤いという情報を持ったユニットや,丸いといった情報を持つユニットなどがある.そのユニットが連結して,1つのネットワークを作る.このネットワークが,りんごという概念を構成するということだ.

ものすごく単純化するとこんな感じ.

文字通りコネクション(つながり)で概念が形成される.

De Groot Distributed Feature Model

ここから本題である.De Groot氏のDistributed Feature Model(以後DFM)はこのコネクショニズムを用いて,Bilingual Lexiconの仕組みを明らかにしようとしている.

DFMではユニットを二つの素性:lexical featuresとconceptual featuresから構成されるとしている.この二つの素性を想定することにより,初期のBL研究において指摘された「語彙を総体的に捉えすぎている」という問題に対する新しいアプローチを示したことになる.「語彙を総体的に捉えすぎている」とは,語彙というものは本来,音声や綴り字,意味など複数の要素を持っているものなのに,単純に語彙として考えていては深い考察は得られないということだ.

我々は母語の知識というものは自然と深く身につけている.特に視覚的で具体的な名詞(手袋,靴下など)は説明がたやすい.他方,そういったものではない名詞(正義,悪)などは,その状況や事物の相関関係から生じてくるものであり,視覚的で具体的な名詞に比べて説明するのが難しい.

この差をDFMで考えてみると,手袋などはconceptual featuresが豊富だが,正義などは豊富ではないと考えることができる.手袋は見た目,温もり,肌触りなど五感で感じらる概念を多く有している.つまり,概念的な特性を多く獲得しやすい.しかし,正義を視覚的に捉えたり,感じることは難しい.なので,正義の概念的な特性は獲得しにくいのだ.それゆえに,具体的な語は説明しやすいが抽象的な語は説明しにくいと考えることができる.

Bilingualism

これらを前提に考えると,L2の語を学習する際はL1の語と対応させていくことで学習するというを仮定することができる.つまり,L1でlexical featuresとconceptual featuresがで結びつけられた語彙をL2に当てはめる(lexical featuresを共有する)訳である.

Basnight-Brown, Dana. (2014). Models of Lexical Access and Bilingualism. Foundations of Bilingual Memory. 85-107. 10.1007/978-1-4614-9218-4_5. より引用
Basnight-Brown, Dana. (2014). Models of Lexical Access and Bilingualism. Foundations of Bilingual Memory. 85-107. 10.1007/978-1-4614-9218-4_5. より引用

これは,L1でのconceptual featuresの豊富さがL2にも影響することを意味する.

さらに,L1とL2でconceptual featuresが異なる場合は単純にL1を当てはめるだけでは機能しない場合がある.例えば,英語とフランス語で球を意味するballとballeの関係性を見てみたい.英語のボールは基本的に球体のものなら全てballに含まれる.basketballもbaseballもballである.他方,フランス語の場合は球体を指す点は変わらないが,それと同時に「小さい」という意味も内包している.なので,フランス語でのballeはバスケットボールなどは想起させにくい.これはballというネットワークには「小さい」というユニットは含まれないが,balleというネットワークには含まれると考えると合点が行く.

DFMでは,このようにL1とL2の関係性を分析できる.

参考文献
赤松信彦. (2010). バイリンガルレキシコン研究における 「言語と認知」. 主流, (72), 1-34.
三宅恭子. (2005). バイリンガル記憶表象研究: 定義上のあるいは方法論的課題の検討. 国際開発研究フォーラム, 29, 47-59.
[~~コネクショニズムと汎化 (全脳アーキテクチャ若手の会 第29回勉強会)]https://www.slideshare.net/takumayagi/connectionistgeneralization-79406596
De Groot, A. M. (1992). Bilingual lexical representation: A closer look at conceptual representations. In Advances in psychology (Vol. 94, pp. 389-412). North-Holland.

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