言語間での複雑さは等しいのか・・・?
日本人は英語を難しいと感じることが少なくないように思える。
そもそも、母語以外の言語は習得することが難しい。実際に英語学んでみると、過去形のほかに過去完了形と言う時制が存在していたり、a, the といった冠詞なんてものも存在している。これらの要素は、日本人が英語が難しいと感じる原因の1つだろう。
他方、英語話者は日本語を難しいと感じる傾向がある。例えば、ひらがな・カタカナ・漢字の存在、オノマトペ、助詞のてにをは の使い分け等は日本語学習者が苦戦する要素だ。
こういった点を踏まえると、英語には英語の複雑さが、日本語には日本語の複雑さが存在するように考えられる。
こういった言語間の複雑性は、それぞれの特徴はあるものの総体として見ればどの言語も複雑性は同じように複雑であると仮説が存在している。
それが言語の等複雑性 (equi-complexity)と呼ばれる仮説だ。
この仮説は言語の内部でトレードオフを想定する。つまり下記のような想定である。
下位システムが複雑であれば、 関連する別の下位システムは単純である
渋谷 (2021)
この言説は深い検証が行われずに通説のような形で流布されてきた。そもそも言語の複雑性といったものを定量的に測定することが難しかったからだ。
しかし、近年のコンピュータ技術の発達、特に自然言語処理技術の発達はめざましく定量的に測定が難しかったものも、新しい技術を使えば比較が可能になってきた。そういった背景からこの分野は近年検証を改められている。
参考文献
- 渋⾕, 勝⼰ / シブヤ, カツミ. (2022)。言語の複雑性研究の現状。阪大社会言語学研究ノート、18、119-144。https://doi.org/10.18910/86408