Universal Grammarと局所性
現在の生成文法の主流がミニマリスト・プログラムであることには間違いないが, 他方でそれまで論じられてきた過去の理論を学ぶことも非常に重要である. なおかつその中には, 未だ残る問題や, ミニマリスト・プログラムよりもむしろ従来の理論の方が適切に説明ができる事象なども存在する.
今回は従来の障壁理論からミニマリスト・プログラムへの移行期間のような時期に論じられていた, Fukui (1990) の論文の一節を取り上げてみたい.
計算システムとしての UG(Universal Grammar)が持つ形式的特性として生成文法理論が現在までに明らかにしてきたものには, 句構造が持つ(帰納関数を用いて規定できるような)離散的無限性(discrete infinity)や変換規則が示す構造依存性(structure-dependence)などがあるが, これらの特性と同様に, もっとも集中的に研究が行なわれているトピックとして, UG における「心的計算」(mental computation)が示す「局所性」(locality)を挙げることができるだろう.
(Fukui, 1990, p. 58)
もちろん, これが論文のタイトルにある通り「バリア」に関しての論文であるために, 局所性にフォーカスしている面はあるだろうが, 当時の問題意識として, UG(普遍文法)の局所性が論じられていることがわかる. この局所性の問題は, 後のミニマリスト・プログラムにおいて, フェイズ理論などの問題とともに今でも議論される観点で非常に興味深い.
参考文献
- 福井 直樹. (1990). 統語論におけるバリアー概念について. 認知科学の発展, 2, 57–88. https://doi.org/10.11225/jcssadv.204