結核を考える
以前の投稿でボトルネック効果というものについて言及した.
これは端的に言えば, その集団の個体数が減少すると次世代に遺伝情報を伝える個体の構成も変化し, 文字通りボトルネックのように, ある特定の傾向を持つ個体が相対的に多く生き残るというような発想である.
今回, その発想を結核の説明の理論的な根拠としている一節を見てみたい.
中世以降の結核感染症の疫学的検討から結核菌感染がある地域で流行した場合の自然経過が解析され,その地域の結核罹患率は流行発生より100~150年後に最大となり,その後は自然に低下することが示された(死亡率は結核流行後50~75年で最大となりその後低下).筆者は,結核感染症の自然経過を説明する理論として“遺伝学的ボトル・ネック効果”を考えている(Bonnell, Science 184:908, 1974).本効果は“個体の自然淘汰”を説明する理論であり,何らかの原因によって集団の個体数が減少すると遺伝的多様性が低い子孫が優先的に生き残ることを意味する.
(山口, 2017, p. 201)
これはあくまで筆者はこう考えているという内容であり, 結核の減少については, 社会環境や公衆衛生の改善など別の観点の影響を検討する必要もあるかもしれないが, 結核の歴史に対してボトルネック効果を踏まえて検討するという観点が非常に興味深い. 私はこの部門, 疫学などの知識は疎いため浅い疑問になるが, 今回示されているようなタイムスパンだと, 数世代ほどの世代交代が想定される. そのようなタイムスケールで遺伝学的なボトルネック効果が十分に発揮できるのだろうか, というような興味が湧く.
山口佳寿博. (2017). 結核の歴史から学ぶボトル・ネック効果の意義. 気管支学, 39(3), 201–202.